脂質異常症とは?
脂質異常症は冠動脈疾患の危険因子です。
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では、LDL 140以上、HDL 40未満、中性脂肪150以上を脂質異常症と診断します。
脂質異常のみでは特に自覚症状はありません。
特にLDLが重要です。
LDLと冠動脈疾患リスクと関係は直線的で、高ければ高いほど高リスクで、低ければ低いほど良い「The Lower, The Better」です。
LDLを下げる方法は(1)食事、(2)運動、(3)脂質異常症治療薬の3種類です。
目標値は140未満、高リスク群120未満、二次予防100未満、超高リスク群70未満です。
LDL 70未満でプラーク退縮が期待出来ます。
・食事は日本動脈硬化学会「The Japan Diet」を参考に動物性脂肪を控えます。
揚げ物、油いっぱいのラーメン、肉の脂身等は勿論こと、チーズ、バター、マーガリン、生クリーム、ヨーグルト等の乳脂肪も動物性脂肪です。脂質摂取量の可視化には「あすけん」が有用です。オリーブ油等の多価不飽和脂肪酸も空気と触れた状態で時間が経つと容易に酸化され、飽和脂肪酸に変化してしまいますので注意が必要です。飽和脂肪酸の摂取を減らし、不飽和脂肪酸の摂取を増やします。
・運動は有酸素運動、毎日30分以上または週3日以上が目標です。ただし、高リスク例では冠動脈疾患の有無を評価してからの運動開始が安全です。
脂質異常症の治療と同時に、必要に応じて冠動脈CT、頸動脈エコー等によって血管の状態を評価します。
脂質異常症治療薬
脂質異常症治療薬の第一選択はスタチンです。
・スタチン6種類:クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、リバロ(ピタバスタチン)、ローコール(フルバスタチン)、リポバス(シンバスタチン)、メバロチン(プラバスタチン)
・小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:ゼチーア(エゼチミブ)
・PCSK9阻害薬:レパーサ(エボロクマブ)、他
・フィブラート:パルモディア(ペマフィブラート)、ベザトール(ベザフィブラート)、他
・オメガ3脂肪酸:エパデール(EPA)、ロトリガ(EPA・DHA)
頸動脈プラーク
頸動脈プラークとはエコー検査にて頸動脈に1.1mm以上のプラークを認める状態です。全身の血管の動脈硬化の指標として有用です。
手術適応基準は症候性50%狭窄以上、無症候性70%狭窄以上を目安、頸動脈内膜剥離術(CEA)と頸動脈ステント留置術(CAS)があります。
進行抑制は冠危険因子の管理です。経過観察は年1回程度が目安です。
家族性高コレステロール血症
家族性高コレステロール血症は生まれつきLDLが高い病気です。
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」ではLDL 180以上、皮膚所見、家族歴から診断します。原因はLDL受容体、アポリポ蛋白、PCSK9等の遺伝子異常が知られています。
治療目的は冠動脈疾患の予防、治療目標はLDL100未満、高リスク群70未満です。